労働衛生コンサルタントの過去問や、労働安全衛生・環境関係の法令改正情報を綴っています。
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労働衛生工学過去問(H30-4-1) [労働衛生コンサルタント過去問:労働衛生工学]
労働衛生コンサルタントの筆記試験を受験される方を応援するために、過去問について、一問ずつ解いていきたいと思います。<<尚、回答例は小生の見解ですので、誤解誤答についてはコメントにてご意見を頂きたいと思います。>>
労働衛生工学 第46回(平成30年)
例年、問3問4は、局所排気装置設計に関わる計算問題で、どちらか一方はがっつりとダクトの各位置での風速や圧力損失を計算して、局所排気装置計算書を完成させる問題ですが、平成30年は、問4が局所排気装置計算書を埋める問題でした。
平成30年の局所排気装置計算書は、主ダクトと二つの枝ダクトの計算を行って、さらに、静圧バランスをとる方法についての考察を求めていますので、計算量も多く難問だったと思います。
問4 図に示す局所排気装置の系統線図について、以下の設問に答えよ。
1)粉じん作業を行う作業場に設置する図に示した局所排気装置の系統線図について、以下の問に従って表1、表2及び表3の計算書の空欄に入る値を計算し、解答用紙に記入せよ。
ただし、ダクトの断面は円形とし、空気の密度は1.20 kg/m3 とする。計算は有効数字4桁目を切り捨て有効数字3桁で行い、解答は有効数字4桁目を切り捨て有効数字3桁で答えよ。
なお、自由空間に設置されたフランジのない外付け式フードの開口面から距離X [m]における等速度面の面積Ac[m2]は次式で表すことができるものとする。
また、直線ダクトの圧損係数は、次式のうち正しい式を選択して使用すること。
ただし、D [m]はダクト直径、L [m]はダクト長とする。
①フード1の主ダクト系列の計算書(表1)の空欄に入る値を計算し、解答用紙に記入せよ。ただし、フード1は囲い式フードで、開口面の面積は1.00 m2、平均風速は0.840 m/s、開口面上の気流のばらつきの程度を表すk は1.2 とする。また、合流部での圧力損失の計算には合流前の速度圧を、合流部及び拡大ダクトの静圧の計算には合流後及び拡大後の速度圧を用いて行い、計算書の空欄にはその値を記入すること。また、フード1の排風量の計算については、計算過程を示すこと。
② フード2の枝ダクト系列の計算書(表2)の空欄に入る値を計算し、解答用紙に記入せよ。ただし、フード2は自由空間に設置された側方吸引のフランジ付外付け式フードで、開口面の面積は0.250 m2、制御風速は1.00 m/s、制御風速が確保されるフード開口面からの距離を0.400 m とする。また、フード2の排風量の計算については、計算過程を示すこと。
③ フード3の枝ダクト系列の計算書(表3)の空欄に入る値を計算し、解答用紙に記入せよ。ただし、フード3は床面上に設置された側方吸引のフランジのない外付け式フードで、開口面の面積は2.00 m2、制御風速は1.20 m/s、制御風速が確保されるフード開口面からの距離を0.400 m とする。また、フード3の排風量の計算については、計算過程を示すこと。
先ず、各フードの排風量を計算します。
フード1は、Q1=60×k×開口面積(m2)×平均風速(m/s)=1.2×0.84×1.00
<加筆・修正しました> Q1=60秒×1.0m2×0.84m/s=50.4
フード2は、Q2=等速度面面積×制御風速で、
等速度面の面積は、フランジ付きの外付け式フードの場合、
Ac=0.75×(10×0.4×0.4+0.25)=13.875→13.875
∴Q=60×13.875×1.00=83.25→83.3m3/分
<加筆・修正しました>
フード3の場合は、
等速度面の面積は、フランジ無しの外付け式フードを床に置いた場合、
Ac=5×開口面からの距離の二乗+開口面面積なので
Ac=5×0.4×0.4+2.00=2.8m2
Q3m3/分=60秒×2.8m2×1.2m/s=201.6→201m3/s
<加筆・修正しました>
表1には、Q1(m3/分)と、Q1+Q2(m3/分)と、Q1+Q2+Q3(m3/分)の値を記入します。
表2にはQ2(m3/分)を、表3にはQ3(m3/分)の値を記入し、
次に、それぞれの排風量Qとダクト断面積から流速を求め、更に速度圧も求めます。
流速=Q÷ダクト断面積÷60(Qがm3/分、流速はm/sなので、60秒で割るのを忘れないように)
速度圧=1.2÷2×(流速の二乗)
4桁目切り捨てなので、どんどん計算します。
此処までの結果を表に赤字で書き込みました。
さらに、直線ダクトの圧損係数は、摩擦係数×ダクト長×ダクト直径の式を使って計算し、同じく表に青字で書き込みました。 圧損はダクト長が長くなれば大きくなるし、ダクト系が大きくなると小さくなるのは容易に想像できますので、どちらの式を選ぶのかは、すぐに判断できると思います。
これ以降は(力仕事で)各区画の静圧を計算し、ダクト入口からファンに向かって累計していきます。
今日の部分は、ひねり満載でした。
①囲い式フードの風量計算では、問の冒頭に「粉じん作業」とありますので制御風速は、0.7m/sです。ばらつきの程度を表すkが1.2なので、平均風速は0.84となります。従って、k-1.2を式に加える必要はありません。
②側方吸引の外付け式フードの風量計算では、問題本文にはフランジの無い物の自由空間の式を見せておいて、フード2はフランジ付き、フード3はフランジ無しで床置きとひねりが半端ない!!(笑)設問ですね。
問4の続きは、また明日。
沼野先生の本で、みっちり勉強しましょう。
排風量の計算で迷うのですが、k=1.2を計算すべきか、しないべきか。
この問題は「作業場に設置する」とあるので設計中であり、1.2を使用すべきかと思うのですが?
試験問題集では使用していないようです。
勝手ながら、もし見解などございましたらお願いいたします。
by 通りすがり (2020-10-11 16:14)
通りすがりさん、コメントありがとうございます。
確かに、悩ましい問題だと思います。
私見としては、問題文に「平均風速が0.84m/s」とありますが、
このフードが粉じん用の囲い式フードだとすると、フードに求められる制御風速は、0.7m/sとなります。バラツキを1.2ととると、0.7×1.2=0.84となりますので、平均風速0.84m/sであれば、つじつまが合うのかな?と思いますので、補正係数k=1.2は、0.84に考慮済みと考えました。
by ちょまぷ (2020-10-11 20:33)
早速のご回答ありがとうございます。
0.84が0.7×1.2とは思いつきもしませんでした。
そう考えると、0.84をそのまま計算に使用するのが妥当ですね。
少し視界が開けたような感じがします。
突然の質問にありがとうございました。
by 通りすがり (2020-10-13 18:02)