事業運営のための衛生工学知識を深め、また、労働衛生コンサルタントを目指す方の参考になるよう、衛生工学の知識と新しい法令の告知情報を中心に記載していきます。
自動車運転者を使用する事業場に対する令和2年の監督指導、送検等の状況を公表 [法令・通達情報※労働基準関係]
自動車運転者を使用する事業場に対する令和2年の監督指導、送検等の状況を公表
労働基準関係法令違反が認められたのは、監督指導実施事業場のうち約81%の2,957事業場
監督指導を実施した事業場は3,654事業場。このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは、2,957事業場(80.9%)。また、改善基準告示※違反が認められたのは、1,882事業場(51.5%)。
※「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)(別紙2参照)
■ 主な労働基準関係法令違反事項は、(1)労働時間(45.5%)、(2)割増賃金の支払(22.9%)、
(3)休日(3.4%)。
■ 主な改善基準告示違反事項は、(1)最大拘束時間(37.1%)、(2)総拘束時間(27.9%)、
(3)休息期間(25.9%)。
■ 重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは61件。
送検事例が3件 いずれも、労災発生・労災請求が契機で、調査が入った結果のようです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11202000/000822625.pdf
違法な長時間労働の是正についてこれまで指導を行っていた事業場において、トラック運転者の死亡に係る過労死等の労災請求があったことから、この運転者について事故以前の就労状況を確認した結果、36協定で定める1か月の延長時間を超え、1か月約130時間の違法な時間外労働を行わせていたことが疑われた。
また、当該36協定は、締結当事者である労働者の過半数代表者が使用者の意向に基づき選出されており、無効なものであったことが判明した。
積み荷を載せて走行中、意識障害をきたし、衝突事故を発生させ死亡したトラック運転者について、事故以前の就労状況を確認したところ、36協定において定める1日についての延長時間を超えて時間外労働を行わせていたことが判明した。
なお、36協定において、改善基準告示の上限を超える場合にはその時間をもって時間外労働の上限とする旨定めていた。
長時間労働により精神疾患を発症した旨の労災請求がバス運転者からなされたことを受け、この労働者についての就労状況を確認したところ、36協定で定める月の上限時間を超えて時間外労働を行わせていたことが判明した。
改善指導の事例
タクシー会社
・不適切な歩合給制度(累進歩合制)→長時間労働を誘発する恐れが大きい→廃止するように指導
バス会社
・1日の拘束時間が15時間を超える日が上限である週に2回を超えており、4週間の平均拘束時間が上限である71.5時間を超える者が認められた
→
・日々の拘束時間が随時確認できるように運行管理システムを改修し、日常的に運行状況を管理するとともに、ダイヤを見直すことで、拘束時間を改善基準告示の上限以内にまで削減した
トラック運送会社
・運転者の中に、1日の拘束時間が上限の16時間を超える日が1か月に19日あり、1か月の総拘束時間が約500時間、1か月の時間外・休日労働が時間外又は休日労働に関する協定(以下「36協定」という。)の上限を上回る約250時間となっている者が認められた。
・月給額が最低賃金額を下回っており、また、割増賃金の支払が不足
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飲用空容器の薬品容器への流用による誤飲 [法令・通達情報※労働衛生]
職場で見つけたのは、
まさか飲むことは無いとは思ったのですが、
調べてみると、「誤飲による中毒災害」
液状薬剤の誤飲による災害防止について
【災害事例】
(1) 発生状況
・作業で使用したシンナーが余ったので、清涼飲料水のペットボトル
・それを誰かが、これを飲料水だと思い冷蔵庫に入れた。 (清涼飲料水は、普段から冷蔵庫に入れられていたので)
・4日後、被災者は仕事が一段落した時、のどが渇いたので、
・このペットボトルは、誰かが、
(2) 原因
①シンナーを、清涼飲料水のペットボトルに入れ、
・ さらし粉溶液は、100倍に薄めて使う原液で、次亜塩素酸カルシウムを主成分とし色は緑茶に似た緑色である。事業場ではさらし粉溶液を夏場に千切りキャベツ等の消毒等を行うために使用しており、10リットル入りポリ容器で購入したものを1.8リットル入りペットボトル(調味料が入っていた空容器)に移し替えて業務用冷蔵庫に保管していた。
・ 当該ペットボトルには黒マジックで「さらし粉」と記載していたが、災害発生時には記載面が裏側となっていて読めない状態であり、かつその隣に同程度の大きさの緑茶入りペットボトルが置かれてあった。
・弁当販売店の調理場で、調理等の作業を労働者3名で行っていた。調理等の作業が一段落ついたところで休憩を取り、作業者の一人が業務用冷蔵庫から緑茶と誤認して野菜消毒用のさらし粉溶液の入ったペットボトルを取り出してコップ3個に注ぎ、3名はこれを飲んで激しく嘔
吐し、救急車で病院に搬送され、急性薬物中毒と診断された。
・ 当該ペットボトルのラベル等の外装は、はがされており、内容物に関する表示もなかった。
・ 会議室にはホワイトボードが設置されており、その文字消し用に当該変性アルコールが使用されることがあった。
・被災者は、会議室内でパソコンに向かい設計作業を行っていた。
・机上には、被災者が持ち込んだ500ミリリットルペットボトル入り清涼飲料水が2本飲みかけのまま置かれていた。
・会議室のホワイトボードの文字消し用に持ち込まれた500ミリリットルペットボトル入り変性アルコールが、同じ机上に置かれていた。
・被災者は、変性アルコールの入ったペットボトルを清涼飲料水の入ったペットボトルと誤認して内容物を飲み込み、医師の診察の結果、急性薬物中毒と診断された。
(2)発生原因
②薬剤の入った容器を人が飲食物を置く可能性のある場所に注意事項の表示もなく放置していたこと。
③薬剤の使用について、他用途への転用による危険有害性の認識が少なく、管理が十分に行われていなかったこと。
・ 床ワックス材のはく離剤(ベンジルアルコール21%、2-アミノエタノール18%、水酸化ナトリウム2%等)は本工事の元請事業場所属の労働者が500ミリリットル入りペットボトル(飲料用の廃容器)に入れて持ち込んだものであり、この薬剤は、スプレー容器に入れ水で希釈して使用するものである。
・ 当該ペットボトルのラベル等の外装は、はがされており、内容物に関する表示もなかった。
・被災者は、工事現場に500ミリリットル入りペットボトルに入れたお茶を自宅よりバッグに入れ持参していた。当該ペットボトルのラベル等の外装は、はがされてあった。
・同じ場所で作業をしていた同僚が、Cが工事現場に持ち込んでキッチンに置いていたはく離剤入りのペットボトルを被災者が持参したお茶入りペットボトルと誤認して 被災者 のバッグの横に移動させた。
・ 被災者 は午後の作業再開後に喉が渇き、持参したペットボトルのお茶を飲もうとして、自分のバッグの隣に置いてあったペットボトルの内容物を飲んで急に苦しみだし、救急車で病院に搬送され急性薬物中毒と診断された。
②薬剤の表示や注意事項もなく、薬剤を飲料用の容器に入れていたこと。
③現場における有害物の使用について、関係労働者間の連絡調整が不十分であったこと。
ストレスチェック制度の実施状況および課題に関する調査報告 [その他、労働安全関係]
「ストレスチェック制度の実施状況および課題に関する調査報告」が、産業精神衛生研究会のホームページhttps://www.sanei.or.jp/に公開されておりましたので、レビューしました。
https://www.sanei.or.jp/images/contents/458/Report_Stress_Check.pdf
概要
産業医とメインの対象者として、事業所における実施状況などのアンケートを行った。
多くの事業所で、法的義務として実施されているが、現場の産業医から見たところでは、「第一義的なセルフケアへの効果は未知数であり、否定的な見方も多い」という状況。
ストレスチェック制度は、職場のメンタルヘルス対策の一部であり、他の活動との関連づけなどを行いながら、推進されるべき取り組みである。しかし、まだそのようには活かされていないことがうかがわれる。
以下、結果の一部を抜粋
①集団分析については、94.2%が実施。
他方、集団分析後の職場環境改善については、未実施が 35.8%
②ストレスチェックの受検率は、80.0%が 90%以上で、70%以下は 8.0%。
③高ストレス者の割合は、5%および10%が 82.5%
大半の事業所で、10人に一人位の割合で、高ストレス者がいるということ!
④高ストレス者における医師による面接指導の実施率は、0%、1%、5%、10%で 77.5%
そのうちの1/10くらいしか、医師が面談出来ていない!!
⑤労働者自身が行うストレス対策に対する効果は、37.0%が役立っていると回答した一方、50.6%が否定的。
自由記入欄より、気になったご意見
・現状では,申し出る者の割合が非常に低い
・面接を申し出たら結果の提供に同意したとみなされる点が,面接指導を低調にしている一因と考えられる
・職場と関連が弱い高ストレスに対して,効果的な対応ができない
・介入が必要な例が面接にのらない可能性が低くない
・面接を申し入れてくる高ストレス者の大半は特に問題がないことが多い点から,本制度がよく機能していないと推測される
・「高ストレス」を続けているにも関わらず面接を希望しない者への対応が難しい
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個人用保護具をめぐる課題 [労働衛生コンサルタント]
一方、リスクアセスメントでは、個人用保護具によるリスク低減は、最後の段階で選ぶことになっていますが、実際の現場では、あるいは、過去からの習慣で、個人用保護具に頼っている場面も多いと思います。
リスクアセスメントの対策の優先順
①危険性または有害性のより低い物質への代替、化学反応のプロセス等の運転条件の変更、取り扱う化学物質等の形状の変更等又はこれらの併用
②工学的対策(防爆構造化、安全装置の二重化等)、衛生工学的対策(設備の密閉化、局所排気装置の設置等)
2003年(平成15):DMF中毒8名
• 発生状況:ブタジエン抽出塔内部において残さ物を取り除く清掃作業を行っていたところ、残さ物に含まれていたDMF(抽出補助溶剤)が塔内部に充満し、これを吸入したため、11名中8名が有機溶剤中毒となった
• 発生原因等:関係事業者間の連絡不足、呼吸用保護具未着用、作業主任者未選任
有害物があることが認知されていなかった。
2005年(平成17):DMF中毒1名
• 発生状況:被災者が鋳造金型の洗浄作業のため、DMACを洗浄剤とし5ヶ月間使用していたところ、急性肝炎となった。被災者は呼吸用保護具を着用し、換気設備も設置されていたが、換気能力不足のため、室内に滞留した当該物質に曝露し続けたもの。
• 発生原因等:換気不十分
2006年(平成18):DMAC中毒1名
• 発生状況:コンテナ洗浄作業においてDMACを使用しタンク内面の洗浄作業を行っていた被災者がタンク内の強制換気を行わず作業を行っていた。
• 発生原因等:換気不十分、保護具不適切(有機ガス用防毒マスク→送気マスク、化学防護手袋、化学防護服)
2007年(平成19):DMF中毒3名
• 発生状況:プラスティック製品工場において電子機器用フレキシブルプリント基板の製造のため、DMFで洗浄作業を行ったところ、有機溶剤が皮膚から体内に侵入し、中毒となった。
• 発生原因等:不適切な保護具の使用、安全衛生教育不十分
化学防護手袋の法的要件と、通達等で示されている留意事項 [法令・通達情報※労働衛生]
・皮膚障害を与える物を取り扱う業務
・皮膚からの吸収・侵入により健康障害(注1)や感染をおこすおそれのある業務
③ 労働者は、②により保護衣等の使用を命じられたときは、これを使用しなければなりません。