昨日に引き続いて、今日も保護具のお話をしたいと思います。

安全衛生担当をしていると、個人用保護具の選択や適切な着用を指導しても、なかなか習慣になってこないことが多いと思います。
 
一方、リスクアセスメントでは、個人用保護具によるリスク低減は、最後の段階で選ぶことになっていますが、実際の現場では、あるいは、過去からの習慣で、個人用保護具に頼っている場面も多いと思います。

リスクアセスメントの対策の優先順
①危険性または有害性のより低い物質への代替、化学反応のプロセス等の運転条件の変更、取り扱う化学物質等の形状の変更等又はこれらの併用
②工学的対策(防爆構造化、安全装置の二重化等)、衛生工学的対策(設備の密閉化、局所排気装置の設置等)

③管理的対策(作業手順の改善、立入禁止等)

④化学物質等の有害性に応じた有効な保護具の使用

  原則として上記①~③の措置を講じても除去・低減し切れなかったリスクのみ実施

 

先日の田中先生の講習会でも、DMFなどについて、以下の事例が紹介されていました。

 

DMF,DMACによる労働災害発生事例(労働衛生のしおりより、中央労働災害防止協会発行)
 
2003年(平成15):DMF中毒8名
• 発生状況:ブタジエン抽出塔内部において残さ物を取り除く清掃作業を行っていたところ、残さ物に含まれていたDMF(抽出補助溶剤)が塔内部に充満し、これを吸入したため、11名中8名が有機溶剤中毒となった
• 発生原因等:関係事業者間の連絡不足、呼吸用保護具未着用、作業主任者未選任
 有害物があることが認知されていなかった。 

 
2005年(平成17):DMF中毒1名
• 発生状況:被災者が鋳造金型の洗浄作業のため、DMACを洗浄剤とし5ヶ月間使用していたところ、急性肝炎となった。被災者は呼吸用保護具を着用し、換気設備も設置されていたが、換気能力不足のため、室内に滞留した当該物質に曝露し続けたもの。
• 発生原因等:換気不十分

 工学的対策の設計に不備
 
2006年(平成18):DMAC中毒1名
• 発生状況:コンテナ洗浄作業においてDMACを使用しタンク内面の洗浄作業を行っていた被災者がタンク内の強制換気を行わず作業を行っていた。
• 発生原因等:換気不十分、保護具不適切(有機ガス用防毒マスク→送気マスク、化学防護手袋、化学防護服)

 工学的対策が不十分、且つ、保護具の選択が不適切
 
2007年(平成19):DMF中毒3名
• 発生状況:プラスティック製品工場において電子機器用フレキシブルプリント基板の製造のため、DMFで洗浄作業を行ったところ、有機溶剤が皮膚から体内に侵入し、中毒となった。
• 発生原因等:不適切な保護具の使用、安全衛生教育不十分

 経皮吸収に対する対策が不十分

  

事例で紹介されているような事故では、原因は一つではなく、二つ以上の要因が不幸にも重なって起こるケースが多いようです。

リスクアセスメントを行って、工学的対策を実施していることが大前提なのですが、残留リスクを低減するために、個人用保護具を着用することが必要な場合、出来ることをしっかりやっておくことが、自分の身を守ることに繋がりますので、作業される方たちに、こういう事故例を知っておいてもらうことで、保護具着用の習慣化につなげることが大事なことではないかと思います。

 

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