標記の通達が令和2年8月17付で発信されています。





(公社)福井県労働基準協会
お知らせ一覧




建築物の塗膜中のpcbや鉛が解体作業中に飛散することが問題になっていますが、今度は、飛散防止のための剥離剤に含まれる、溶剤(ベンジルアルコールとか、ジクロロエタンとか)が作業者の健康被害を起こしています。

 

引き金となったのは、「東名高速道路 中吉田高架橋 塗装塗替え工事による火災事故」のようですね。出火原因は特定できていないのですが、いくつかの公開されている報告書からは以下のような状況が想像できます。







中日本高速道路株式会社 東京支社は、2019年11月21日にE1 東名高速道路 中吉田高架橋下(静岡市駿河区中吉田付近)で発生した塗装塗替え工事に係る火災事故を受けて、専門的な見地から塗装塗替え作業上の課題の把握や再発防止策の検討をおこなうため、伊藤 義人名古屋大学名誉教授を委員長とする「東名高速道路 中吉田高架橋 塗装塗替え工事による火災事故再発防止委員会」を設置しました。










<<出典:第二回委員会:資料 nexco中日本のホームページより>>



報告書から読み取ったリスク源は、このくらいありました。






塗膜の有害成分の環境への飛散防止のため、作業場全体が換気の悪い状況になっており






水系剥離剤そのものには引火性は無いが、可燃性の溶剤ガスが蒸発すると滞留しやすい環境下であり、






何らかの点火源から、滞留したこの溶剤ガスに引火したこと可能性






溶剤使用という認識が無く、電動工具や照明は非防爆型を用いていたため、これらが点火源となった可能性





防火シートの上に、漏洩防止のための床養生のビニールシートを敷いており、延焼を助長した可能性



かき落した塗膜くずをくるみ、ビニル袋に入れて足場内に仮置き(溶剤も含むため可燃性が高い)しており、延焼の直接原因となった。



換気が不十分になっており、有害な煙が充満し初期消火活動に支障





整理すると





リスク源(モノ)

塗膜剥離剤(水系=水+アルコール類)

塗膜剥離剤で剥離した塗膜くず、

養生シート(ビニール)

非防爆電気器具(照明・電動工具)




リスク源(環境)
通気の悪い環境(蒸気が滞留しやすい)


リスク源(管理)
塗膜くずの足場内放置、剥離剤のリスク評価未実施、




この状況で、火災が起こると、剥離した塗膜中にはpcbと鉛も含まれているため、燃焼ガスの有害性もえげつない感じですね。


厚労省の通達では、

①剥離剤の有害性・危険性の調査=SDS入手と化学物質リスクアセスメント)

②ばく露防止 

  ベンジルアルコール GHSによる有害性区分は中枢神経系と腎臓障害、目刺激、経皮吸収

  ジクロロメタン   特化則に沿った対応

がうたわれていますが、火災に関しては、これだけでは防げなかったように思います。


重たい課題です。


剥離剤のメーカーの謳い文句には、

   消防法非危険物==>可燃物だけど。。。

   有機則非該当 ==>GHS分類では、有害性はあるけど

となっていますので、SDSをしっかり読まないと、リスク評価は難しいですね。


次回、火災の他、中毒の事例も取り上げて、リスク評価と対応策の紐づけをしてみたいと思います。





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