「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案」のパブコメが発出されました。
「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案」に関する意見募集について
化学物質管理のあり方検討会の討議を受けて、「自律管理」に向けた省令改正となりますので、内容を詳しく見てみたいと思います。
 
改正の趣旨では、


「有機則等により危険性又は有害性等の高い化学物質を個別に特定、具体的な措置内容を法令で定めていた従来の仕組みを、ラベル表示やSDS交付による危険性又は有害性等に関する情報の伝達及び当該情報に基づくリスクアセスメントによる、事業者が自律的な管理を行うことを基本とする仕組みへ見直す」となっています。
 
改正の概要としては、
安衛則では
ア)化学物質管理体制の強化
a)化学物質管理者を選任
b)保護具管理責任者を選任
c)業種にかかわらず、雇入れ時等に、化学物質の危険性・有害性・取扱い方法を教育
 

a)b)ともに、選任届までは不要ですが、立ち入りなどで確認されることになりそうですね。

後述するエ)の化学物質管理のモニタリングにおいて、安全衛生委員会などに参加して、リスクアセスメントの結果やばく露状況を報告して意見を述べたりする役割となりそうです。

 

化学物質管理者の選任要件や役割、選任時教育などについては、この前の化学物質管理のあり方についてのリスクコミュニケーションの質疑でも、これから専門家委員会で検討すると言うことのようです。

  

イ)SDS等による情報伝達の強化
a)SDSによる通知の方法を、HPへの掲載で可とする。
b)表示通知対象物質のSDSの5年毎の確認と更新したときの通知を義務化
 表示通知対象物質以外で有害性区分のあるものについては、努力義務
c)事業者が移し替えてして使用・保管するときにも、表示・従業員への通知が必要
 

a)は、提供者側の責任の一部を、使用者にも課する方向で、良い方向と思いますが、

b)は、製造・提供者側の負担が増えて、大変です。

c)は、これまで、盲点で野放しだったので、当然の措置かと思います。

 

ウ)リスクアセスメント
a)化学物質リスクアセスメントの実施記録を3年保管
b)労基署による化学物質管理の指導c)リスクアセスメント対象物について、
 ①-ばく露リスクの低減措置の実施
 ②-別途定めるばく露限界値の遵守
 ③-①②の結果の労働者の意見を聞き、その結果を記録3年保管
   がん原性物質については、30年保管
 ④-リスクアセスメント対象物以外の物質についてのばく露防止措置を努力義務に
 ⑤-健康診断は、労働者と医師の意見を聞き、実施を判断する
  ばく露基準値を超えた場合は、速やかに健診を実施
 ⑥-健診の結果の保存(3年、がん原性物質は30年)
 ⑦-がん原性物質の取り扱い作業記録を30年保管
 ⑧-眼・皮膚障害の危険性のある物質についての保護具着用
 ⑨-眼・皮膚障害の危険性の不明な物質については、保護具着用を努力義務
 
経皮吸収についての強化が物足りないと感じました。もう少し、議論や研究結果が必要なのかもしれません。
 
エ)化学物質管理についての労使によるモニタリング
 衛生委員会における付議事項として、ウの(c)①、②及び⑤を追加
  ばく露低減策、ばく露限界値遵守状況、健康診断、以上3つの結果の報告と審議
  安全衛生委員会の審議事項として義務付けられます。

 

オ)化学物質によるがんの把握の強化
a)同一物質を取り扱い作業者が二人以上、同じ部位のがんに罹患した場合は、医師に業務起因性を聞くこと
b)前項で、医師が業務起因性の疑いを判断した場合は、労基署に届けること
  
一方、有機則等関係では、
カ)化学物質管理の水準が一定以上の事業場に対する個別規制の適用除外
下記の条件を満たしている場合、所轄の労基署に申請することで、有機則等の規制(局所排気の設置や稼働条件、健康診断なども)を除害できるとしています。
条件は、
 ①事業場に化学物質管理専門家が配置されていること
 ②3年間以上、化学物質による死亡および休業4日以上の労災発生が無い
 ③3年以上で、第一管理区分が継続
 ④3年間以上、特殊健診の(IS法令順守化学物質による)有所見が無い
 

①は、オキュペイショナル・ハイジニストに加え、労働衛生コンサルタント・衛生工学衛生管理者も、一定程度の経験で専門家となるようですが、資格とか選任届とかについては、専門家委員会の検討と、告示などでの通達が気になるところです。

 

キ)作業環境測定結果が第三管理区分である事業場に対する措置の強化
 ㈠ 第三管理区分に区分された場所について、
  ①作業環境改善の可否と改善方策について、作業環境管理専門家の意見を聴く
  ②この意見を勘案し必要な措置を講じた上で、作業環境を再評価する
 ㈡ 第三管理区分が改善できなかった場合は、
  ①「個人サンプリング測定等」を行って、結果に応じた呼吸用保護具使用させる。
   さらに、呼吸用保護具のフィットテストを実施し、結果を記録3年間保存。
  ② 保護具着用管理責任者を選任し、呼吸用保護具に係る業務を担当させること。

  ③ 作業環境管理専門家の意見の概要と措置及び評価の結果を労働者に周知

 ㈢ 第三管理区分の評価結果が改善するまでの間、

   ① 6月に1回「個人サンプリング測定等」を行い、結果に応じた呼吸用保護具を使用させる

   ② 呼吸用保護具について、1年以に1回、フィットテストを行う。

   ③ ①②の結果を3年間(粉じんの結果は7年間)保存すること。 

  

これまで、第三管理区分が改善されていない事業所への指導事項が、より明確になっています。個人ばく露測定とその結果に応じて呼吸用保護具等を選んで使用させること、フィットテストの実施と記録なども含まれている点がポイントですね。 

  


ク)健康診断の実施頻度の緩和

健康診断の頻度(通常は6月に1回)を1年に1回とすることができる

 条件は

 ・特化則の特別管理物質等に係るものは除く

 ・作業環境測定で3回連続して第一管理区分

 ・健康診断で3回連続異常所見がない

 ・ばく露量に大きな影響を与えるような作業内容の変更がないこと

など、となっています。


こちらは、労基署への申請については、要らないのかもしれません。衛生委員会での審議をしておく必要はありそうですね。今後の、Q&Aや告示で明らかになると思われます。

  

以上ですね。

 

今後の審議や、関係告知もしっかりフォローしたいと思います。

 



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