「有害因子による発がん性」のリスク評価は、記述式試験の「労働衛生工学」「健康管理」の両方で、良く出題される分野です。今日は化学物質のSDSなどに記載されている発がん性の区分(発がん性物質の有害性区分:以下、発がん性区分と略しています)について整理してみたいと思います。

 
事業者向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0) page224
 
JISの区分は、国連GHSの区分と同じだそうです。




国連GHS分類による発がん性区分




区分 1



 
1) ヒトに対する発がん性が知られている又は恐らく発がん性がある。 区分 1 への化学物質の分類は、疫学的データ又は動物データを基に行う。 個々の化学物質は、更に区分 1A 又は区分 1B に区別してもよい。


 
区分1A
ヒトに対する発がん性が知られている化学物質。
主としてヒトでの証拠によって区分 1A に分類する。



 
区分1B
ヒトに対して恐らく発がん性がある化学物質。
主として動物での証拠によって区分 1B に分類する。



区分2
ヒトに対する発がん性が疑われる。
ヒト又は動物での調査から限られた証拠があるが、それが確実に区分 1 に分類するには不十分な場合




 
分類を決定するために参照する情報源としては、
WHO 国際がん研究機関(IARC)、
EU CLP 分類、
米国国家毒性プログラム(NTP)、
日本産業衛生学会「許容濃度等の勧告」発がん物質、
ACGIH“TLVs And BEIs”発がん性注記、
米国 EPA Integrated Risk Information System(IRIS)、
ドイツ DFG “List of MAK and BAT Values”発がん性注記
などがあります。



 





各種機関の発がん性区分の比較


国連
GHS

日本産業
衛生学会

IARC
ACGIH
厚労省の
有害性評価



1A


A1
ヒトに対する発がん性が
知られている



1B
2A
2A
A2
ヒトに対しておそらく
発がん性がある




2B
2B
A3
ヒトに対する発が
ん性が疑われる






試験に出そうなのは、GHS、IARC、産業衛生学会、ACGIHくらいでしょうか。
分類のポイントは

①分類の考え方は、発がん性の強さ(量や確率)などではなく、発がん性の根拠となる情報の確からしさで決めているということ。
②根拠情報には、人における発がん事例動物実験での結果発がん性のメカニズム、などについて、実験内容なども含めた情報の確からしさを確認して採用する。
といった点だと思います。


参考までに、IRCAの発がん性区分について、もう少し詳しい説明を表にしておきます。





IARC


Group 1:
Carcinogenic to humans


Group 2A:
Probably carcinogenic to humans


Group 2B:
Possibly carcinogenic to humans


Group 3:

Not classifiable as to carcinogenicity to humans






 




グループ
疫学的証拠
動物実験
その他の
証拠

判定





十分
ーー
ーー

Carcinogenic




ーー
十分
人でのテータ



2A


限定的
十分
ーー

Probably
Carcinogenic




限定的
ーー
十分



ーー



十分


人でのデータ


メカニズム情報



2B


限定的
ーー
ーー

Possibly
Carcinogenic





ーー


十分
ーー


ーー
その他の十分な証拠





ーー
十分
人での証拠がない

Not Classifiable




上記以外の場合



 

 

 




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