私の回答案を紹介しますが、誤答・誤解については、コメント欄でご指摘いただけると助かります。
令和3年までの受験区分保健衛生の記述式科目「健康管理」の過去問については、こちらのリンクをご参照ください。→→健康管理(記述式)過去問R03分まで
先ずは、各問題の概要です。
各問とも、専門分野の幅広い正確な知識を問う問題になっています。
問1「放射線の有害性について」
放射線の基本から、生化学的な影響、その対策まで、広範囲での正確な知識を問う問題ですが、専門性は高いですが教科書通りの回答が可能だと思います。医療現場でX線の取り扱いについても問われています。
問2「インジウムの有害性と対策について」
こちらは、インジウムの健康影響について、医学的な知識も含めて問われるだけで無く、対策に関しては、一般的な有害物質管理・化学物質管理の原則も含めて専門的知識を問う問題です。
問3「メンタルヘルスについて」
予防や職場環境の課題、症状とケア、復職と情報管理、といった形で、全般的に広範囲な知識を問う問題になっています。深い内容を問われてはいませんが、各項目について正確な知識が求められているようです。
問4「健康診断全般について」
一般健康診断の法的な位置づけや取り扱いに加え、後半では人間ドックの取り扱いやオプション検査項目の位置づけなど、実務的な内容が問題に入っており、広範囲な実務的な知識が問われているようです。
問1問2は、どちらも、世の中的には(福島の除染事業とか、半導体事業で必須のインジウムの有害性)重要な課題ですが、なかなか実業務でここまで専門的なことを求められた経験のある方は少ないでしょうから、難易度が高いように思います。
後半の問3問4の選択は、メンタルヘルスと健康診断という、一般事業所で触れることの多い課題ですので、事業所の保健師さんには、どちらを選んでも、そこまで、難易度は高くないように思います。
問1 放射線の性質及び職場における放射線障害の予防に関し、以下の設問に答えよ。
(1) 電離放射線は非電離放射線と何が異なるのか簡潔に説明せよ。
(2) 電離放射線の特徴に関する次に掲げる用語について両者の相違がわかるように簡潔に説明せよ。
① β線とγ線
② 実効線量と等価線量
(3) 電離放射線の内部被ばくに関する次の事項について簡潔に説明せよ。
① 内部被ばくが生じる機序
② 内部被ばく線量の測定法
(4) 電離放射線の健康影響に関する次の事項について簡潔に説明せよ。
① 確率的影響
② 確定的影響(組織反応)の急性障害
(5) 放射線業務従事者の眼に生じるおそれがある健康障害に関する次の事項について説明せよ。
① 健康障害の具体的な内容
② 健康障害を予防するための等価線量の限度
③ 健康障害を予防するための措置
(6) 放射線防護におけるALARA の原則について簡潔に説明せよ。
(7) 医療現場における放射線防護について次に掲げる事項ごとに説明せよ。
① 照射条件の工夫
② 散乱線の遮蔽
③ 放射線業務従事者の行動に関する留意点
④ 個人用保護具
問1 放射線の性質及び職場における放射線障害の予防に関し、以下の設問に答えよ。
(1) 電離放射線は非電離放射線と何が異なるのか簡潔に説明せよ。
電離放射線は、原子または分子から電子を取り除きイオン化(電離)させる能力を持つ放射線であり、非電離放射線はこの能力を持たない放射線である。
(2) 電離放射線の特徴に関する次に掲げる用語について両者の相違がわかるように簡潔に説明せよ。
① β線とγ線
https://www.fepc.or.jp/nuclear/houshasen/houshanou/shurui/index.html
β線は原子核から飛び出した電子線
γ線は、不安定な原子核から放出される電磁波
② 実効線量と等価線量
https://www.qst.go.jp/site/qms/39508.html#tab2
「等価線量」は、組織・臓器ごとの影響を表す単位として使われ、「実効線量」は、全身への影響を表す単位です。
組織・臓器における吸収線量に対し、放射線の種類ごとに影響の大きさを重み付けしたものを等価線量といいます。吸収線量に、放射線の種類による影響の強さの違いを補正するための係数(放射線加重係数といいます)を掛けて算出します。
さらに組織・臓器ごとの等価線量に、発がんの起こりやすさによって決められた係数(組織加重係数といいます)を掛け、すべての組織・臓器で足し合わせたものが実効線量です。
(3) 電離放射線の内部被ばくに関する次の事項について簡潔に説明せよ。
① 内部被ばくが生じる機序
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h29kisoshiryo/h29kiso-02-01-01.html
①放射性物質が、呼吸・飲食・傷口などから体内に入る。その後、放射性物質の一部は、排出されるが、特定の臓器に濃縮される場合もある。体内で放射性物質から発生した放射線により、障害が発生する。
② 内部被ばく線量の測定法
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h28kisoshiryo/h28kiso-02-04-10.html
・体の中から出てくるγ(ガンマ)線を直接測る体外計測法、あるいは、尿や便の中にある放射性物質の量を測るバイオアッセイを用いる方法を用いて、内部被ばく線量の計算に必要となる摂取量を推定します。
・推定した摂取量(単位はベクレル)に、放射性核種の種類や年齢ごとに細かく定められている預託実効線量係数を乗じることで、内部被ばく線量を求めることができる。
・体内に摂取した経路、年齢、放射性物質ごとに異なる放射性物質の蓄積・代謝挙動、を元に、数理モデル計算を行って求められた各臓器や組織ごとの吸収線量と、放射線の種類や臓器による感受性の違いを考慮して、預託実効線量係数が求められている。
(4) 電離放射線の健康影響に関する次の事項について簡潔に説明せよ。
① 確率的影響
② 確定的影響(組織反応)の急性障害
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h30kisoshiryo/h30qa-03-01.html
②確定的影響とは、大量の放射線を浴びることで細胞死が起こり、組織や臓器の機能喪失や形態異常が起こることです。
①確率的影響とは、細胞の突然変異により発生する影響です
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h30kisoshiryo/h30kiso-03-01-04.html
①確率的影響 :がん、白血病、その他遺伝子的な影響
②確定的影響 :脱毛、白内障、皮膚障害(火傷など)
出典:「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料 令和4年度版」を参考にしました。
小問(5)からは、次回以降に続きます。
令和4年までの「労働衛生工学」の過去問については、こちらの過去ブログをご参照ください。
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