労働衛生コンサルタント、労働安全コンサルタントの筆記試験、お疲れ様でした。

受験者の方から問題を入手いたしましたので、順番に紹介したいと思います。



今日は問1小問(4)と小問(5)



(4)有機溶剤の上記の発生や換気に関する以下の文章中の空欄【A】~【F】に当てはまる語句や数値を解答欄に記入せよ。ただし、同じ記号の空欄には同じ語句が入る。なお、数値はすべて有効数字4桁で記すこと。

①塗装作業場において、シンナー(トルエン70%、酢酸エチル15%、酢酸ブチル10%、1-ブタノール4%、エチレングリコール1%)から発生する蒸気は、まず低【A】成分の【B】、【C】が主となり、更に蒸発が進むと【B】がなくなり【C】蒸気のみになり、その後そのほかの高【A】成分が出てくる。

②ある屋内作業場において、キシレン70%を含む塗料を8時間当たり30Kgの割合で消費している。この時全体換気によってキシレン蒸気としての空気中平均濃度を50ppmにする最小換気量を求めたい。まず、キシレンの分子量(モル質量)は106g/molであり、25℃、1気圧の気体1molの体積は【D】Lであるから、この作業場で使用されている塗料からは、キシレンは、8時間で【E】cm3発生している。

 

また全体換気は【F】換気とも呼ばれ、一般に発生した有害物を 【F】 して屋外に排出する。有害物であるキシレンが発生直後に作業場内の空気中に均一に分散したと仮定すると、8時間で屋内に導入された空気全体にキシレン【E】cm3が分散したと考えて最小換気量は【G】m3/分と計算できる。

 


以下、小職の回答案

 

①塗装作業場において、シンナー(トルエン70%、酢酸エチル15%、酢酸ブチル10%、1-ブタノール4%、エチレングリコール1%)から発生する蒸気は、まず低【A】沸点成分の【B】酢酸エチル、【C】トルエンが主となり、更に蒸発が進むと【B】酢酸エチルがなくなり【C】トルエン蒸気のみになり、その後そのほかの高【A】沸点成分が出てくる。

②ある屋内作業場において、キシレン70%を含む塗料を8時間当たり30Kgの割合で消費している。この時全体換気によってキシレン蒸気としての空気中平均濃度を50ppmにする最小換気量を求めたい。まず、キシレンの分子量(モル質量)は106g/molであり、25℃、1気圧の気体1molの体積は【D】22.424.47Lであるから、この作業場で使用されている塗料からは、キシレンは、8時間で【E】cm3発生している。

  30×10^3g[×]0.7÷106×24.47×10^3=4.438 4.848×10^6

       → 4.848×10^6 cm3/8時間

  (2021/06/01:てるりんさんのご指摘により、計算間違いを修正しました)

また全体換気は【F】希釈換気とも呼ばれ、一般に発生した有害物を 【F】 希釈して屋外に排出する。有害物であるキシレンが発生直後に作業場内の空気中に均一に分散したと仮定すると、8時間で屋内に導入された空気全体にキシレン【E】4.438 4.848m3が分散したと考えて最小換気量は【G】m3/分と計算できる。


 E/L[×]8[×]60=50×10-6 → L=4.848÷(8[×]60×50)[×]10^6=202.0m3/分

または、

 トルエンが毎分4.438 4.848/8/60=10100cm3/分発生 

 50ppmにするには、10099÷50=184.9 202.0m3

 

希釈換気という言葉はあまり耳にしませんが、厚労省の資料にもありました。https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/pdf/taisaku/common_Ventilating.pdf

トルエンと酢酸エチルのどっちが先に蒸発するかな~?と悩みましたが酢酸エチルの方が沸点が低いこと、トルエンの方が成分比率が高いことから、酢酸エチルが先に蒸発が完了しトルエンが残ると判断しました。理屈上は作業温度での蒸気圧で決まるので、沸点の情報だけでは一義的には決まらないと思いますが、トルエン比率が高いので、まぁ間違いないかなと思います。 







 











(5)作業環境測定の義務が無く管理濃度が決められていない化学物質AおよびBに関し、下記の問いに答えよ。
 

①物質Aについて実験動物を用いて行ったばく露試験により、無毒性量(No Observed Adverse Effect Level:NOAEL)が500mg/kg/dayとして得られている。作業者の体重を60Kg、8時間当たりの呼吸量を10m3、一日の作業時間を8時間とし、不確実係数を300と仮定して、この物質を取り扱う労働現場におけるばく露限界値【mg/m3】を求めよ。ただし計算過程も示すこと。


【小生の回答案】 

①不確実係数300なので、実験動物の無毒性量を300で除して体重60Kgを掛けて、人ひとり分の無毒性量とする。

  500÷300×60=100mg/(人・day)

②一日(の作業8時間での)の呼吸量10m3/(day・人)なので、

  無毒性濃度は、100mg/ (人・day) ÷ 10m3/(day・人) =10mg/m3


  ばく露限界値=10mg/m3


  

②物質Bを取り扱う労働現場において、A測定の方法を用いて気中濃度を測定したところ、幾何平均M(mg/m3)の対数値(logM)が0.7160、幾何標準偏差の対数値(logσ)が0.3364であった。この物質のばく露限界値を管理値の代わりに用いるとしたとき、この作業場の管理区分を求めよ。ただし、物質Bのばく露限界値は9.5mg/m3とし、第一評価値、第二評価値の算出に当たっては、計算過程を記すこと。なお、以下に示す式や値から適切なものを選んで使用することが出来る。


 

【小生の回答案】

log(第一評価値)=logM+1.645√((logσ)^2+0.084)

        =0.7160+1.645√(0.3364×0.3364+0.084)

        =0.7160+1.645×√(0.1972)=0.7160+1.645×0.44411.446

  (第一評価値)=10^1.446>9.5(ばく露限界値)

            (10の1乗は、10なので、10の1.4乗は、10より大きい)

 

log(第二評価値)=logM+1.151×{(logσ)^2+0.084}

        =0.7160+1.151×(0.3364×0.3364+0.084)

        =0.7160+1.151×0.1972=0.7160+0.2270=0.943

   (第二評価値)=10^0.943<ばく露限界値=9.5

   →10^0.9=7.94なので、     

   ∴第二評価値はばく露限界値9.5より小さい 


結論:第一評価値>ばく露限界値、第二評価値<ばく露限界値なので、第二管理区分



対数計算で悩みましたね。関数電卓の持ち込みは禁止されていて、単純計算と√のみの電卓の使用が認められているので、こんな問題設定になったのかもしれません。受験生の方は試験会場で冷静かつ迅速に情報を活用することまで求められて、苦労されたのではないかと思います。


問1の小問はここまでですが、問題数が多く、前半1時間で解ききれるかどうか厳しいですね。R02年の記述式はかなり厳しいようです。




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