事業運営のための衛生工学知識を深め、また、労働衛生コンサルタントを目指す方の参考になるよう、衛生工学の知識と新しい法令の告知情報を中心に記載していきます。
騒音障害防止ガイドラインが改正されましたR050420-1 [法令・通達情報※労働衛生]
騒音障害防止ガイドラインが改正されました。厚労省からのパンフレットが4/20に公開されていますので、ご紹介します。
30年ぶりの改正で、考え方も大きく変わっています。
去年、告知された改正の方向性は、このブログでも紹介しましたが、そこからの追加分もありますので、じっくり勉強したいと思います。
先ずは、改正の背景ですが
難聴などの騒音障害の労災認定数の変遷です。
10年で2500人~3000人くらい=年250人ぐらいが労災認定されているようです。ご存じのように、難聴は回復できない障害ですので「耳が遠いのは歳のせい」と済ませられない労働災害だと思います。
また、最近の法令改正の傾向として、
①企業内での管理体制を明確にするため、管理者を決める
②作業毎に法律を定めるのでは無く、作業環境の評価結果を使って、事業者がリスクを評価し自主管理する。
③作業環境評価だけでなく、個人ばく露の評価を併用し、屋外などの対策を促す。
④事業者が任命した管理者が、対策を検討し作業を改善すると同時に、保護具を使う場合には、正しく使用させる責任を負う。
⑤元請けが請負人の安全管理も責任の一端を負う。
という事が、今回の改正にも反映されているように感じます。
【変更点の1】騒音障害防止対策の管理者専任の義務化
最初に「騒音障害防止対策管理者」を設けることとなっています。これは、1年前の見直し方針の時には、見落としていた情報でした。少し驚きましたが、作業場の騒音を測定してリスクに応じた対策を実践するための体制作りの要となる措置で、ここのところの厚労省の障害予防対策では、事業者における体制の整備や役割の明確化を重点化しているので、その進め方を継承したものと思われます。
【変更点の2】元請け事業者による指導援助の義務化
例えば、
①使用する機械・工具は低騒音なものを選定するよう促す、
②支給・貸与する設備等の騒音によるばく露を低減するための措置
③聴覚保護具の着用を促す
④教育や健康診断に関する情報提供や受講・受診機会を提供するよう配慮
【変更点の3】坑道・屋外での測定・評価・措置の義務化
ガイドラインの対象となる作業場の作業の種類については、変更はありません。但し、坑内作業と屋外の作業場という区分が明示され、従来の測定・評価に加えて、対策として、保護具着用だけでなく、等価騒音レベルが85dB以上の作業場では、騒音低減措置の実施が努力義務として、追加されています。坑内・屋外ともに、従来通り、定点測定(作業環境測定のB測定類似)を行うことが必要ですが、新たに、個人ばく露測定を用いても良いとなっています。
【変更点の3の2】測定記録の義務化
新たに、定点測定(あるいは、個人ばく露測定)の測定については、記録も義務化されており、保管期間は3年間です。
坑道工事や建設現場などでは、事業者の負担は大きいと思います。
【変更点の4】健康診断における聴力測定の内容強化
健康診断における聴力測定の方法が変更されています。
①定期健康診断(騒音)における4000ヘルツの聴力検査の音圧を、40dBから25dBおよび30dBに変更(初期の異常を検知するため)
②雇入れ時または配置替え時や、定期健康診断(騒音)の二次検査での聴力検査に、6,000ヘルツの検査を追加しました。
特に①の内容は全事業者に関わるので、影響範囲が大きいですね。
【変更点の5】聴覚保護具の選定基準の明示
JIS T8161-1に基づき測定された遮音値を目安とし、必要かつ十分な遮音値のものを選定する。騒音対策用の保護具の性能について、85dB以下になるよう選定することとなり、また、着用の状況を確認することも義務化されています。
【変更点の6】作業時間管理の追加(努力義務?)
等価騒音レベル85dB以上の作業場所での作業時間を、85dBの時を8時間とし、超えた分だけ、ばく露が少なくなるような時間管理を検討するよう規定されました。
【変更点の7】教育内容の変更
教育内容の変更
対象者は、85dB以上となる作業場所で作業する従業員と管理者。
教育内容と時間は管理者と作業員で内容・時間を変えています。
管理者は、合計180分。 作業員は、合計70分(短縮可能)。内容を絞って受講しやすいよう短くなりました。
旧:作業者全員(管理者は、規定されていなかった):3時間
① 騒音の人体に及ぼす影響 ② 適正な作業環境の確保と維持管理 ③ 防音保護具の使用の方法 ④ 改善事例及び関係法令
新:管理者(3時間)
① 騒音の人体に及ぼす影響 ② 適正な作業環境の確保と維持管理 ③ 聴覚保護具の使用及び作業方法の改善 ④ 関係法令等
新:作業者(1時間:短縮可能)
① 騒音の人体に及ぼす影響 ② 聴覚保護具の使用
(継続して、第一管理区分の場所、および、85dBを超えない作業場所での従業員には、省略しても良い)
【変更点の8】計画の届出の際に、騒音低減対策の書面添付
計画と届出の時に、騒音低減対策概要を示す書面または図の添付が必要
届出の対象となる設備で、このガイドラインの対象となるのは、例えば、ボイラー、機械プレス、乾燥設備、粉じん作業のサンドブラストとかが該当となりますね。意外と広範囲なので要注意です。
以下、参考にした資料です。
騒音障害防止のためのガイドライン(本文)[PDF形式:197KB]
騒音障害防止のためのガイドライン(別表)[PDF形式:201KB]
別表1は、作業環境測定が必須の作業場所を規定しています。
別表2は、このガイドラインの対象となる作業を規定しています。
騒音障害防止のためのガイドライン(別紙)[PDF形式:247KB]
別紙には、作業環境測定による等価騒音レベルの測定・措置・記録などの詳細が規定されています
騒音障害防止のためのガイドライン(解説)[PDF形式:379KB]
日測協の説明会動画
https://www.jawe.or.jp/topics/noise.html
検討会資料:
見直し方針R04/03/22:https://www.mhlw.go.jp/content/000915712.pdf
旧ガイドラインH4/10/01:https://www.mhlw.go.jp/content/000918299.pdf
パブコメの結果:https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000252889
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