事業運営のための衛生工学知識を深め、また、労働衛生コンサルタントを目指す方の参考になるよう、衛生工学の知識と新しい法令の告知情報を中心に記載していきます。
「令和2年度化学物質のリスク評価検討会報告書」は、衛生工学の問題に出るか? [法令・通達情報※労働衛生]
厚労省から「令和2年度化学物質のリスク評価検討会報告書」が、発表されました。
概要→https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20886.html
詳細分書類→https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20829.html
以下、8物質のリスク評価が実施されました。
(1)詳細リスク評価書(1物質)
No.073 オルト-フェニレンジアミン
(2)初期リスク評価書(7物質)
No.117 アジピン酸
No.118 1-アリルオキシ-2,3ーエポキシプロパン
No.119 2-(ジエチルアミノ)エタノール
No.120 アクロレイン
No.121 ジエタノールアミン
No.122 りん酸トリ(オルト-トリル)
No.123 2-クロロニトロベンゼン
詳細リスク評価が実施された「オルト-フェニレンジアミン」は、経気道ばく露により労働者に健康障害を生じさせるリスクが高いと判定され、今後、「特化物に追加しばく露限界値を決定する」などの、健康障害防止措置が検討されます。
初期リスク評価が実施された以下2物質「1-アリルオキシ-2,3ーエポキシプロパン」「アクロレイン」については、経気道ばく露に関するリスクが高い等と判定され、ばく露の要因などの実態調査を含めた詳細リスク評価が開始されます。
初期リスク評価の結果、以下4物質「2-(ジエチルアミノ)エタノール」「ジエタノールアミン」「りん酸トリ(オルト-トリル)」「2-クロロニトロベンゼン」については、経気道暴露のリスクは低いと評価されましたが、経皮ばく露のリスクが高いと判定され、経皮ばく露のリスク要因調査を含めた、詳細リスク評価が開始されます。
「アジピン酸」は、経気道ばく露、経皮ばく露の両方で、リスクが低いと評価されました。
また、いずれの物質も、「本来有害性の高い物質=通知対象物質」であるため、「法の規制を待つことなく」各事業者における作業において、化学物質リスクアセスメントを実施し、その結果に基づいてリスク低減に取り組むことが義務づけられています。
2-クロロニトロベンゼンは、現在は「表示通知対象物質」には含まれていませんが、次の改定で追加される予定の物質リストには含まれているので、近々「表示通知対象物質」となる見込みです。
リンク先参照→「アクリル酸二―(ジメチルアミノ)エチル他235物質に係る労働者の健康障害防止のための規制強化に関する労働安全衛生法関係法令の見直しの検討に係る意見聴取」
本ブログの8/14記事もご覧ください→https://chomapu-shikaku01.blog.ss-blog.jp/2021-08-14
労働衛生コンサルタントを受験される方に向けた議論
今回取り上げた個別の物質の有害性については、記憶する必要はありませんが、
①表示・通知対象物質(GHSラベル貼付や、SDS文書の発行・保管の義務あり)について、国がリスク評価を行った結果に基づいて、特化則などに、個別の規制値・作業への制約条件が定められるということ
②国によるリスク評価は、
・有害物質ばく露報告による、事業所におけるばく露の実態の調査
・国の検討会による、初期リスク評価の実施
・同、ばく露限界値の設定、事業所での実態調査を踏まえた、詳細リスク評価の実施
・リスク評価結果を踏まえた、健康障害防止措置の検討・決定
・政省令の改定
という流れで行われていること
③表示・通知対象物質については、国のリスク評価結果を待つこと無く、事業者が自らの作業実態において、化学物質リスクアセスメントを実施し、その結果に基づいてリスク低減に取り組む必要がある。
の3点については、記憶しておいても良いと思います。
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