事業運営のための衛生工学知識を深め、また、労働衛生コンサルタントを目指す方の参考になるよう、衛生工学の知識と新しい法令の告知情報を中心に記載していきます。
令和3年度「第49回」労働衛生コンサルタント試験(労働衛生工学)回答速報5 [労働衛生コンサルタント過去問:労働衛生工学]
例年通り、問3と問4は、局所排気装置の設計に関する問題ですが、問3は、フード排気排気量の計算と局排設計書の計算問題になっています。
問題文と図
問3
図1に示す局所排気装置の系統図について以下の設問に答えよ。
但し、ダクトの断面なすべて円形とし、空気密度は1.20kg/m3、フード3の必要排気量は60.0m3/分とする。設問(1)、(4)、(5)、(6)については、計算過程又は理由を示せ。計算は有効数字4桁で行い、回答は4桁目の四捨五入して有効数字3桁で答えよ。設問(2)の局所排気装置計算書は、5桁目を四捨五入して有効数字4桁で答えよ。
(1)図2に示す同じ形状の囲い式フード1およびフード2について、必要排風量[m3/分]を求めよ。ただし、制御風速0.50m/s、開口部の気流分布の補正係数kは1.1とする。
(2)
主ダクト系列の局所排気装置計算書の空欄に計算結果を記入せよ。合流部の圧力損失は合流前の速度圧に圧力損失係数を乗じて求めるものとする。空気清浄装置の圧力損失は、排風量120m3/分の時、150Paである。空気清浄装置の圧力損失は排風量の2乗に比例するとして計算せよ。
また、直線ダクトの圧力損失は、計算書に直管圧損が未記入の番地については、ダクトの摩擦係数を0.02として計算せよ。
(3)
主ダクトと枝ダクトの合流点(図1の4-5番地)で、フード1とフード2の二系統の静圧んのバランスがとれていない場合に、バランスを取る方法を二つ挙げて簡単に説明せよ。
(4)
局所排気装置計算書でファン前後の静圧の差を求めよ。
(5)
同じ局所排気装置でファン排風量を現在の二倍にした場合、ファン前後の静圧差は、何倍となるか?
(6)
局所排気装置完成後に、フード1の開口面での風速分布を測定したところ下表のような結果を得た。この囲い式フードの補正係数の実際の値を答えよ。
(7)
フード1の実際の補正係数kを計算値1.1に近づける方法を二つ簡潔に述べよ。
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令和3年度「第49回」労働衛生コンサルタント試験(労働衛生工学)回答速報4 [労働衛生コンサルタント過去問:労働衛生工学]
今日は問2の後半、小問(2)に取りかかります。
騒音測定結果の、周波数解析結果と日本産業衛生学会の騒音のばく露許容基準を用いた計算問題になります。小問(1)の「表1 オクターブバンドの周波数重み付け」を利用するのがポイントのようです。
問題文と図表
(2)ある作業者が屋外で騒音作業をしていた時、作業者の近くで騒音を測定してオクターブバンドによる周波数解析を行ったところ、表2の結果が得られた。以下の①~③の問に答えよ。 但し、問題文中の空欄には、上記(1)の同じ記号の空欄とおなじ語句等が入る。
なお、必要に応じて表1の数値、および、図1のy=10^xのグラフを用いて良い。
表2
①日本産業衛生学会の騒音のばく露許容基準(図2)を用いて、この騒音のばく露許容時間(分)を計算過程を示し、求めよ。(有効数字2桁)
②この騒音の【K】=【等価騒音レベル】を計算過程を示して求めよ。(有効数字3桁)
③この騒音現場で作業者が耳栓(SNR値:25dB)を使用するとき、耳栓装着後に期待される【B】=【騒音レベル】を、計算過程を示し求めよ。(有効数字2桁)
回答案①
表2にA特性の補正を行います。
ということで、最小のばく露時間 30分が、許容時間となります。
図2にもプロットしてみました。
https://www.onosokki.co.jp/HP-WK/c_support/newreport/noise/souon_12.htm
の式を用います。
図1のy=10のべき乗の図から、
L=10log10(10^7.8+10^8.4+10^9.6+10^9.2+10^9.0+10^9.6)
=10log10(6×10^7+2.5×10^8+4×10^9+1.5×10^9+1.0×10^9+4×10^9)
=10log10((6+25+400+150+100+400)×10^7)
=10log10(108×10^8)=10log10(4×27×10^8)
=80+10×{2×log10(2)+3×log10(3)}=80+10×(0.6+1.44)
=80+20.4=100.4dbB 答え 100dB
図1に書き込んでみました。
SNR値:25dBを各バンドで引きます。
騒音レベルと言うことなので、A特性補正値は用いません。
L=10log10(10^6.2+10^6.2+10^7.1+10^6.6+10^6.4+10^7.2)
=<図1が、7.5以上なので、全部に100倍して読み取って、最後に割ります)
=10log10{(10^8.2+10^8.2+10^9.1+10^8.6+10^8.4+10^9.2)/100}
=10log10{(1.5×10^8+1.5×10^8+1.3×10^9+0.4×10^9+2.5×10^8+1.5×10^9)/100}
=10log10((1.5+1.5+13+4+2.5+15)×10^6)
=10log10(37.5×10^6)
=10log10(75/2×10^6)=10log10(5×5×3÷2×10^6)
=60+10×(log10(5)+log10(5)+log10(3)-log10(2))
=60+10*(0.70+0.70+0.48-0.30)
=60+10*(1.58)
=75.8dB 答え 76dB
②③共に、一番騒音レベルの大きい周波数帯の騒音レベルが、2-3帯域あるので、
合計の騒音レベルが2-3倍=3~4dBプラスした値というイメージの数字ですね。
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令和3年度「第49回」労働衛生コンサルタント試験(労働衛生工学)回答速報3 [労働衛生コンサルタント過去問:労働衛生工学]
例年通り、問2は物理的有害因子に対する衛生管理の問題です。
今年は、騒音作業の作業管理です。
小問(1)は穴埋めで専門的知識を問うています。
問2 騒音ばく露作業における作業管理に関して、以下の設問に答えよ。
尚必要に応じて、Log10(2)=0.30、Log10(3)=0.48、Log10(5)=0.70、Log10(7)=0.85、ルート2=1.414、ルート3=1.732、ルート5=2.236 を用いよ。
(1)次の文章および、表1中の空欄【A】~【U】に当てはまる語句、数式、数値などを解答用紙の回答欄に記入せよ。ただし、おなじ記号の空欄には、おなじ語句が入る。
騒音ばく露は、音圧に周波数重み付けを施した【A】音圧を使用して、【B】と呼ばれる量で評価する。騒音の【C】は【A】音圧の【D】(記号はpで表す。)の【E】に比例するので、基準音圧をp0とすると、【B】は式【F】で表される事が出来る。この式により、騒音の【C】が2倍になると、【B】は【G】dB増加する。また、pが2倍になれば、【B】は【H】dB増加することになる。
実際の騒音は、時間変動するため、時刻t0[秒]からt0+T[秒]までの、T秒間における瞬時【A】音圧p(t)の【E】の時間平均は、式【I】で表されるが、これは、T秒間における(pの二乗)に等しい。この関係を【F】に代入することにより、式【J】が得られるが、これを【K】と呼んでいる。
日本産業衛生学会が定める騒音のばく露許容基準は、「この基準以下であれば、一日8時間以内のばく露が常習的に10年以上続いた場合にも、騒音性永久閾値移動(NIPTS)を1KHz以下の周波数で、10dB以下、2kHzで15dB以下、3kHz以上の周波数で20dB以下にとどめることが期待できる」というものである。その分析方法の一つとしてオクターブ分析がある。オクターブ分析では、各オクターブバンドの中心周波数をf0、下限周波数をf1、上限周波数をf2とすると、f0は、f1とf2の【L】平均として定義され、式【M】で表される。また、f1とf2の関係式は、式【N】で表される。従って、各オクターブバンドの周波数範囲と【A】周波数重み付けの関係は、表1のようになる。なお、周波数重み付けにはほかに、【O】と呼ばれるものが有り、表1に示す様な特性を持っている。
表 オクターブバンドの周波数重み付け
回答に疑問がある場合は、アドバイスお待ちしています。
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令和3年度「第49回」労働衛生コンサルタント試験(労働衛生工学)回答速報2 [労働衛生コンサルタント過去問:労働衛生工学]
職場における労働衛生対策に関する以下の設問に答えよ。
(2)粉じん作業を行う屋内作業場において作業環境測定を実施したところ、以下に示す結果を得た。質量濃度と質量濃度換算係数を求め、この作業場における管理濃度と管理区分を決定せよ。
なお、併行測定は、測定時間が60分間で、吸引ポンプ流量は20L/min、補修フィルターの秤量値は捕集前が49.13mg、捕集後が49.33mg、相対濃度計の計数値は10800カウントであり、バックグラウンドは無視する。
A測定の結果、第一評価値EA1:0.12mg/m3、第二評価値EA2:0.068mg/m3が得られた。
B測定は、10分間行い、相対濃度計の計数値は3750カウントであった。
遊離けい酸含有量は、8.0%であった。
(3)以下の作業及びその付帯作業において、化学物質等による健康障害をおこすばく露状況として主要なものを、それぞれ三つずつ挙げよ
①塗装作業
②溶接作業
③鋳造作業
小問(2)
Qが8%の場合、3.0÷(1.19×8+1)=0.285 が管理濃度となります。
管理濃度=0.285mg/m3
A測定の結果は、管理濃度>EA1>EA2となります。
問題文(第一評価値EA1:0.12mg/m3、第二評価値EA2:0.068mg/m3)
K=0.167/180=0.000928mg/m3/cpm
B測定の実測値3750カウントと、0.2mgで10800カウントという情報を用いて
※補足した粉じん量は=3750*0.2/10800=0.0694mg
測定時間は10分間で、問題文にはないのですが吸引ポンプの流量は併行測定と同じ20L/分とすると、体積は200Lなので、1m3に換算すると
0.0694×5=0.347mg/m3
従って、B測定の評価値(EB)は、0.347mg/m3となります。
A測定の結果と合わせて、管理区分は、第二管理区分となります。
B測定の結果の計算では、測定時間からサンプリングした気体の体積への変換がポイントですね。
また、ケイ酸の管理濃度の計算は、覚えておくしか仕方ないのですが、
ここ数年で、計算式が改正されているので、最新の式で計算する必要があるのもポイントかもしれません。ただし、この試験を受ける人が、昔の式を覚えているとも思えませんので、問題はないのかもしれませんね。
①塗装作業
②溶接作業
③鋳造作業
付帯作業も含めてというところがポイントなのかもしれせん。
前後の作業工程を含めて、
ただし、主要なもの、とあるので、ちょっと意地悪ですね。
塗装作業
・塗料の調合や希釈のときに、攪拌するので、溶剤蒸気が飛散し、
・塗装工程で、塗料と一緒に、ミストが飛散し、
・乾燥工程で、塗料から溶剤が揮散し、作業者が吸引しばく露
(・作業に使用する、ウエスや廃塗料缶に残った、溶剤が揮散し、
溶接作業
(金属ヒューム以外の、「化学物質等」というのが厄介ですが、
・溶接作業で発生する、金属ヒュームの吸引ばく露
・ガス溶接作業で使用する不活性ガスによる中毒や酸欠
・溶接後の、研磨作業での金属粉じんの吸引ばく露
鋳造作業
・溶融した金属を型に流し込む際に、発生する金属の蒸気・
・型バラシの作業での、型の素材である砂の粉じんが飛散し、
・成形品のバリ取りなどの研磨作業での、金属粉じんの吸引ばく露
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令和3年度「第49回」労働衛生コンサルタント試験(労働衛生工学)回答速報1 [労働衛生コンサルタント過去問:労働衛生工学]
職場における労働衛生対策に関する以下の設問に答えよ。
(1)次に示す作業①~④において発生した健康障害について、その原因として最も可能性の高い、化学物質とその状況を記し、ばく露防止に有効と考えられる工学的対策又は保護具を具体的に記せ。
例)新築工事現場の浴室の防水工事のおいて、塗料(トルエン49%、酢酸エチル15%)を含む)を手持ちローラーで壁面に塗布する作業を行っていた作業者1名が病院に搬送された。
化学物質 : トルエン及び酢酸エチル
状況 : 発散した有機溶剤蒸気を作業者が吸引した
保護具 : 防毒マスク又は送気マスク
①飲食店において換気フードを掃除するため、作業者が塩化ビニル製手袋を着用し、希釈した苛性カリ(水酸化カリウム)を含侵させた洗浄布で換気フードの表面を拭いていた。数時間の作業後、右手指が炎症を起こした。なお、使用前の手袋に穴開きや亀裂などは無かった。
②工場においてアーク溶射機を使用して、鋼材(H型鋼 最大長さ:4m)に亜鉛溶射吹付け作業を行っていた作業者4名に帰宅後発熱、吐き気等があった。
③床暖房を設置するために、仮囲いの内部において、エンジンカッターやブレーカーによるコンクリート床スラブの切断、破断作業を行っていたところ、作業者1名が倒れ、他の5名も体調不良を訴えた。
④ディスクサンダー等を用いて高速道路の橋梁桁に塗布された防錆剤のかき落とし作業に従事した作業者に貧血、腹痛及び末梢神経障害の症状が見られた。
(2)粉じん作業を行う屋内作業場において作業環境測定を実施したところ、以下に示す結果を得た。質量濃度と質量濃度換算係数を求め、この作業場における管理濃度と管理区分を決定せよ。
なお、併行測定は、測定時間が60分間で、吸引ポンプ流量は20L/min、補修フィルターの秤量値は捕集前が49.13mg、捕集後が49.33mg、相対濃度計の計数値は10800カウントであり、バックグラウンドは無視する。
A測定の結果、第一評価値EA1:0.12mg/m3、第二評価値EA2:0.068mg/m3が得られた。
B測定は、10分間行い、相対濃度計の計数値は3750カウントであった。
遊離けい酸含有量は、8.0%であった。
(3)以下の作業及びその付帯作業において、化学物質等による健康障害をおこすばく露状況として主要なものを、それぞれ三つずつ挙げよ
①塗装作業
②溶接作業
③鋳造作業
①飲食店のケース
化学物質 : 苛性カリ
状況 : 苛性カリと換気フードの油+熱により、塩ビ手袋が劣化。
苛性カリが浸透し、皮膚腐食した
保護具 : 化学防護手袋あるいは、塩ビ手袋でも定期的に交換する
②アーク溶射機のケース
化学物質 : 亜鉛ヒューム
状況 : 飛散した亜鉛ヒュームによる金属熱
保護具 : 粉じんマスクあるいは、換気の強化
③床暖房工事
化学物質 : 一酸化炭素(エンジンの排気ガス)
状況 : エンジンカッターの排ガスが、仮囲い内に滞留し
作業者が吸引し、急性中毒
保護具 : 送気マスク、あるいは、新鮮風による換気
④橋梁工事のケース
化学物質 : 鉛
状況 : 防錆剤中の鉛が、かき落とし作業時に粉じんとして飛散し
作業者が吸引
保護具 : 粉じんマスク
①の飲食店の苛性カリのケースは、ちょっと、悩ましいですね。手袋のような可塑化した塩ビは耐アルカリは若干弱いですが、希釈した苛性カリなら室温なら短時間の使用はOKと思われます。数時間後ということなので、熱+油+アルカリで劣化したと考えるられるかもしれません。一方、家庭用のゴム手袋の指先が、機械的破れやすいというのは、主婦の間ではよく知られているようですね。(そんな問題、労働衛生工学で出すのかどうかは、疑問ですが)→手袋メーカーのHP
②は有名な労災事例(イラストは職場の安全サイトの労災事例より)亜鉛で検索
③は、5名いきなりに倒れているので、粉じんが原因ではなく、エンジンカッターの排気ガスが疑われますね。床暖房+仮囲いとあるので、室内工事と考えると、よく起こりうる事例だと思われます。(イラストは職場の安全サイトの労災事例より)コンクリートカッターで検索
④も有名な労災事例です。(イラストは職場の安全サイトの労災事例より)橋梁で検索
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